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遺言について

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こんにちは。木村です。

こないだのブログでは仕事のことに一切触れず、広報ブログとしての役割を全く果たせていなかったので、今週は遺言について書きます。

 

遺言って、皆さんはどのようなものをイメージされるでしょうか。

少なくとも、自身の死に際しての何らかの表明をすること、またはその書面というイメージは共通かと思います。

 

では、似たような用語である遺書との違いは何でしょうか。

私は、お恥ずかしい話、大学に入るまで遺言と遺書をごちゃまぜに考えておりました。しかし、法律上は、これらには大きな違いがあります。

 

遺言については、民法に規定されています。

ざっくりいえば、自身の死亡時の財産の処分方法などを記載するためのもので、民法に定められている形式で作成しなければなりません(第960条)。

 

一方、遺書という文言が記載された法律を私は知りません。おそらく、遺書については、自分が死んでしまった後に他人に読んでもらい、自分の気持ちを伝えたり、お願いをする手紙のことだと解釈するのが適切だと思います。

とどのつまり法律行為と事実行為として分けられるでしょうか。

 

相続手続きに用いられるのは遺言です。気持ちを伝えるだけなら、遺書として自由な形式で気持ちを綴れば事足ります。ただ、気持ちの面についても、「遺言」に付言事項として記載できるので、どうせなら民法のルールに則って、正確な遺言を作成しておきたいところですね。

 

何より、遺言は、相続をめぐる紛争を未然に防いだり、相続手続きを楽にするというメリットがあります。

 

民法の相続に関する規定は、基本的に亡くなった方の意思を尊重する考えで作られています。

遺言についても、それが適切なものであれば、法定相続分と異なる財産の配分を定めても有効です。遺言がある場合でも、遺言の内容と異なる遺産分割協議が認められることはありますが、これには相続人全員の同意が必要ですし、遺言の中で遺言と異なる遺産分割協議を禁ずることもできますから、基本的には亡くなった方の望む相続を実現できます。

(なお、相続人にも、相続財産への最低限の期待権を遺留分という形で保障はされていますが、これには遺留分減殺請求という行為が必要ですし、あくまでも亡くなった方の意思を尊重したうえでの制度です。)

 

単に、上記の「遺書」として気持ちを綴った手紙でも、仲のいい相続人間であれば亡くなった方の意思を尊重して円満に解決することはできるかもしれませんが、すべての相続でそのような訳ではありません。争いごとに発展する可能性は、できる限り排除しておいたほうが安心です。

 

さて、一言で遺言といってもいくつかの種類があります。一般的なものでいえば自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかでしょうか。これらを作成するうえで、行政書士や司法書士などの専門家を介することは要件ではありません。ただ、先述の通り遺言には作成するルールがあって、これに従わない場合下手すると無効なものとなってしまいますので、もしご自身で作成する際は、形式にご注意してくださいね。

(ちなみに、私が調べたところ、行政書士・司法書士に遺言作成を依頼した際の費用は、大体10万円前後のようです。)

 

自筆証書遺言と公正証書遺言は、法的な効力としてはどちらも同じものです。

ただ、後者については作成段階で専門家である公証人のチェックが入るので、無効な遺言になる可能性が少なく、安心な制度だといえます。実務上は公正証書遺言を作成することが一般的かと思われます(上記の専門家に依頼した際の費用も、おそらく公正証書遺言作成の際の費用だと思います。)。

 

中には、ご自身で遺言の作成を検討しているだけでなく、ご両親に遺言を作成してもらうことを検討している方もいらっしゃるかと思います。

ただ、こういった「死」に関することっていうのは、いかんせん話題にしづらいですし、ましてや利害関係が生まれる遺言について切り出すのはなかなか難しいですよね。

 

正直なところ、これの具体的な解決策なんてものはないのですが、最近ではテレビ等で相続について取り上げられているのをちょくちょくみますし、一緒に相続に関するテレビなどを見たタイミングで少しづつ遺言のメリットを話したりして、徐々に関心を持ってもらうのがよいのではないでしょうか。

 

ちなみに、遺言をするには意思能力が必要とされており(民法第963条)、作成時に意思能力がないと遺言が無効です。実務上も、認知症の方が遺言を書く際などに問題となりますので、ご注意ください。(認知症という事実だけで意思能力がない=遺言が書けないというわけでなく、個別具体的にが判断されます。)